
買取を魅力的に見せるコツ
Bは、オープン当初からライフスタイルショップを標榜してきた。
が、八〇年代から九〇年代初頭にかけて広げた業態は、ほとんどが洋服主体だったと言っていい。
本格的に家具を導入したのは、前述したように、一九九五年の「二子玉川店」でのことだ。
その後、一九九五年に「B東京」と「Bタイム」という近接する二店舗によって、雑貨・洋服・カフェを複合したライフスタイル提案型ショップ「タイムカフェ」を出したことはすでに述べた。
この時期は、サザビーの「アメリカンラグシー」やワールドの「オゾック」など、洋服を雑貨や古着と複合化させる試みが、ひとつのトレントだった。
八〇年代には「憧れ」として提案された生活のファッション化か、九〇年代には「リアル」な生活のファッション化として、一歩進んだかに見えた。
しかし、それらのなかには、食品まで含めた雑貨を贅沢に並べて見せたものの、収益性が悪くてやめてしまうところも多かった。
DJやアーティストなど多彩な顔を持ったデザイナーが、カフェやクラブを併設したブティックを出したものの、継続できずに方向転換する。
そういった事例がいくつも含まれていた。
時代のベクトルは、明らかに洋服だけでなくライフスタイル提案を求めていたにもかかわらず、送り手であるデザイナーやアパレルが、早計な結果を求め過ぎた。
流行りそうなものにちょっと手を出してはすぐに撤退するよく言えばフットワークが軽い、悪く言えば堪え性がない点は、アパレル・流通業界の短所のひとつと言えるだろう。
その後、前述したように、プリクラ世代が消費市場に参入し、いわゆる狭義のファッション(洋服や服飾雑貨、ヘアスタイル)が中心にはあるものの、広義のファッション(インテリア、文化、レジャ士まで視野が広がり、モノだけでなく音楽やカルチャーも含めた世界観を求めるようになってきた。
それも、パソコンやゲーム、アニメやキャラクターまで、領域は広がっている。
クリエイターの間でも、一分野だけで秀でるのではなく、複数分野にまたがって活躍する人も増えてきた。
ごフイフスタイルを提案できる世界観を持っているかこれに呼応するように、一九九八年の「Bジャパン」では、家具や雑貨に加え、前述したギャラリーを設けて、さまざまな分野のアーティストの作品を展示している。
加えて、二〇〇〇年には期間限定でさまざまなイベントをおこなう「Bニューズ」を開設した。
単に洋服だけでなく、幅広いライフスタイル提案を現実的に手がけていったのだ。
いずれも、目先の利益に即結びつくことではないが、中長期的にBの世界観を伝えるために、カルチャーの発信を続けてきた。
Sは、「ファッションとは川のように流れているものと、底の方に沈殿しているものがある。
そのうち、表面を流れているものがトレントで、底に沈殿しているものがライフスタイル。
その両方をウチはやっている。
それが長く続いた秘訣かなと思う」と語っている。
この文脈から言うと、ライフスタイルとは底に沈殿しているものだから、濁っていてよく見えないし、動きも緩慢で当たり前。
堪えてじっくり取り組んでいくべき領域なのだ。
また、川の底流が、大きな時代の潮流を示していることは言うまでもない。
昨今の消費者のなかには、川の表面だけでなく、底の方まで見透かす層の厚みが増してきた。
つまり、今、求められているのは、洋服にちょっとだけ雑貨や家具を加え、形だけライフスタイル風に見せることではない。
あるいは、部分的にアーティストとコラボレートして新商品を作るだけでない。
中長期的視点をしっかり持って、流行りとしてのライフスタイル提案ではなく、その店なりにブランドの世界観をきちんと伝えていくことこそが必要なのだ。
さらに、ライフスタイルを語る上で、もうひとつ忘れてならないのは、モノによる生活提案だけではなく、コトを含めた世界観まで見せることだ。
確かに、八〇年代あたりまでのライフスタイル提案型ショップは、洋服・雑貨・家具などを並べておけばよかった。
しかし今は、ゆったりとした音楽が流れてくつろげる時間、誰かと場所を共有できる一体感など、“気分につながるコト”が見えるようなライフスタイル提案になっていなければ難しい。
その点でも、Bはカフェでアート展を開催したり、新しい商品を一工夫してギャラリー風に見せたりしている。
こういった。
気分につながること”の提案は、アパレル・流通業界に限ったことではない。
最近は、「デザイン家電」などと呼ばれて、インテリアと融合するような家電の開発が進められている。
キッチンやトイレなど住宅設備機器の世界でも、住まいという空間におけるデザインの提案がなされるようになってきた。
ただ、そのいずれもが、まだまだ点在している状況で、消費者に直接見せる場としての小売店が、旧態依然としているのは残念だ。
相変わらず家電専門の量販店では、アイテム別にずらり商品を並べているだけのところが圧倒的に多い。
キッチンやトイレのショールームも、基本的にはシーンや気分より、商品機能の紹介が優先されている。
その意味でも、Bを始めとするファッション企業が、他業界とコラボレートして家電や住宅設備を作っていくことには意味がある。
家具や雑貨を扱う小売店である「フランフラン」や「タイム&スタイル」でも、積極的に家電や住宅設備のデザインに取り組んでいる。
いずれにしても、ライフスタイルを提案していくにあたっては、明確なひとつの世界観を伝えきれているのか、モノだけでなく。
気分につながるコト”が提案されているのか。
そのあたりこそが問われていくだろう。
ーンヨップであることの優位性Bは、開設当初から、「ブランドではなくショップ」という姿勢を貫いてきた。
市場やお客の動向を肌で感じることができるフンヨップ」を基盤に置いている点は、大きな強みのひとつだろう。
しかも、多様な顔の「ショップ」を揃えていて、客層も幅広いため、さまざまな消費者の動向を知ることができる。
「店で一番大事なことは、働いているスタッフと客が同じような生活をしていて、店にリアリティがあること。
ちょっと背伸びすれば届きそうなものが、Bのフィルターを通して提案され、文化、ライフスタイルを変えていくこと。
これが店を始めた時の気持ちであり最終的な目標である」と、Sは捉えているからだ。
「消費者志向のマーケティング」という考え方自体は、昔から言い古されてきたことだ。
しかし、本当に現実昧が増しだのは、九〇年代に入ってものが売れなくなってからのこと。
さまざまな分野のメーカーにおいても、使い手の立場に立ったものの開発が、優先事項として掲げられるようになってきた。
私か普段、お付き合いしている自動車や情報機器、住宅設備や家電などのメーカーでも、「よい技術で良質の商品を作れば、必ずお客様はついてくるもの」という発想から、「使い手の視点に立ったモノ作りこそが重要」という発想への転換が、大きな課題となっていることはすでに述べた。
しかし、そうは言っても、簡単に発想を変えることができるわけではない。
従来の延長線上で作られているものも、決して少なくはないのだ。
たとえば、高スペック過ぎて素人には取っつきにくかったり、機能・性能優先でデザインが二の次だったりする。
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